近年、気候変動による環境破壊が深刻化し、化石燃料の消費に伴う二酸化炭素排出が温暖化の主要な要因として問題視されています。これを解決するためには、循環型社会の構築が必要不可欠であり、特にプラスチックのリサイクルが重要です。
ポリカーボネートは、CDやDVD、自動車部品など、さまざまな用途に利用されるプラスチック素材の一種であり、二酸化炭素を原料として製造できることから、カーボンリサイクルの観点からも期待されています。しかし、ポリカーボネートは一般的に焼却処分されることが多く、その際に二酸化炭素が再放出されるため、二酸化炭素の放出を伴わないリサイクル方法の開発が求められています。
従来のリサイクル方法として、ポリカーボネートを熱分解して原料の一部であるビスフェノールA(BPA)を回収する方法が検討されていましたが、この方法ではカーボネート基(-COO-)が脱離して二酸化炭素が発生するため、カーボンリサイクルの効果が短期的に留まってしまいます。そこで、本研究では加溶媒分解法に着目しました。
加溶媒分解によって得られる化合物はポリカーボネートの原料モノマーであり、新たにポリカーボネートを生産する際に化石資源を節約できるとともに、廃棄物の抑制や持続的なカーボンリサイクルの貢献が期待できます。加溶媒分解法には主に加フェノール分解と加メタノール分解がありますが、本研究では加メタノール分解について検討します。
加メタノール分解を促進するためには塩基性触媒が有効ですが、ブレンステッド塩基を使用すると、分解過程で副反応が生じて二酸化炭素が発生する可能性があります。そこで、層状複水酸化物(LDHs)を使用することとしました。LDHsは2価金属と3価金属を組み合わせて合成され、その基本層が正電荷を持つため、陰イオンを層間にインターカレートすることが可能です。触媒調製時にメトキシドイオンを層間に取り込み、これを反応に利用することで、副反応を抑制しつつ主反応を促進できる可能性があります。
本研究では、一般的なMg-Al系LDHsを調製し、層間にメトキシドイオンをインターカレートして加メタノール分解を行い、メトキシド型LDHs触媒の効果について検討します。