近年、地球温暖化の問題が深刻化していることから、カーボンニュートラルを実現する手段として、バイオマスから液体燃料や化学原料を製造するバイオマスリファイナリーが推奨されています。特に、様々な化学製品の前駆体となるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)は、米国エネルギー省(DOE)の評価に基づき、バイオマス由来の重要な化学物質「TOP10+4」の一つとして認識されています。
既存の研究では、木質バイオマスの主成分であるセルロースから得られるグルコースを原料としてHMFを合成する方法が広く研究されています。HMFは、グルコースを異性化してフルクトースを生成した後、脱水反応を行うことで生成されます。前段の異性化反応はルイス酸またはブレンステッド塩基によって触媒され、後段の脱水反応はブレンステッド酸によって触媒されることが知られています。
当研究室では、反応中間体であるフルクトースが縮合しやすいため、生成後すぐに脱水反応を促進させるために、二官能性触媒を用いた研究を進めてきました。本研究では、シリカゲルに塩基点としてアミンを、酸点としてスルホ基を固定化した二官能性触媒(シリカゲル固定化二官能性触媒)を使用することにしました。この触媒は、固体触媒であるため生成物との分離が容易ですが、基質との接触頻度が低下し、反応率が低下する可能性があります。そこで、メソ孔を有するシリカゲルに注目しました。メソ孔シリカゲルは、細孔径が2~50 nmの規則的な構造を持ち、比表面積を高めつつグルコースの細孔内への侵入を妨げない可能性があるため、反応率の向上が期待されます。
本研究では、シリカゲル固定化二官能性触媒を調製し、グルコースからHMFを合成する際に最適な細孔径を特定するとともに、官能基の割合を変更することで反応条件の最適化を図ります。
