バイオディーゼル

バイオディーゼル燃料(BDF)は、油脂を原料とする経由の代替燃料であり、硫黄をほとんど含有しないという大きな利点を持っています。たとえば、船舶用燃料としての利用が期待されています。2020年に改正された海洋汚染防止条約では、一般海域における船用燃料油の硫黄分濃度規制が、従来の3.5%未満から新たに0.5%未満へと大幅に引き下げられました。このため、硫黄をほとんど含まないBDFは、今後さらに重要性を増すと考えられます。

さらに、人口増加や工業化、都市化に伴うエネルギー需要の増加を背景に、有限な化石燃料から再生可能で持続可能な代替燃料への以降が急務とされています。現行のBDF製造法では、油脂、メタノールおよび塩基性触媒を用いたエステル交換反応によって脂肪酸メチルエステル(FAME)を生成する方法が一般的です。この方法は、プロセスが簡便であり、低エネルギーで反応が進行するという利点があります。

しかし、この製造法にはいくつかの課題も存在します。たとえば、廃液に強塩基性の触媒が含まれるためその処理が難しいことや、多量の副生グリセリンによる供給過剰の課題が生じています。これらの課題を解決するため、溶媒として、メタノールの代わりにジメチルカーボネート(DMC)を用いた新たなBDF製造法が提案されています。

この新たな手法では、メタノールの代わりにDMCを反応剤として用いることで、グリセリンの副生を完全に抑制することが期待されます。想定される反応(下図)は二段階の進行で、最終的にBDFとグリセロールジカーボネート(GDC)を生成します。GDCは医薬品や機能性ポリマー原料として利用価値の高いプラットフォーム化合物であり、BDFと非混和なため容易に分離回収可能です。また、中間生成物の脂肪酸グリセロールカーボネートモノエステル(FAGC)はBDFと混和し燃料として利用可能であるため、プロセス全体で無駄が生じないという利点もあります。

本研究では、この反応に適した高い活性と耐久性を両立し、触媒成分の溶出なく繰り返し利用可能な不均一系固体塩基触媒の開発を目指しています。