バイオアスファルト

化石資源の利用に伴う温室効果ガス排出による地球温暖化が懸念される中、代替資源として木質系バイオマスが注目されています。木質系バイオマスを糖化してグルコースを生成し、これを基にバイオ燃料や化学原料の生産が検討されていますが、原料をすべて有効に利用することは難しいのが現状です。例えば、ガス化発電プロセスでは、木質系バイオマスからガス化成分が生成される一方、副産物として木タールが生成されます。大型プラントでは、この木タールをボイラーで自家燃料として利用できますが、小規模プラントでは資源として利用されずに放置されることが多いです。

そこで、本研究では、バイオマス資源の包括的利用を目指し、副産物である木タールを高付加価値製品に転用できないかを検討しました。具体的には、木タールを舗装用道路材料(アスファルト)に応用することを考えました。アスファルトは石油由来の製品であり、地球温暖化の観点からも、バイオマス由来の代替品が望まれます。しかし、木タールをアスファルト材料に応用する技術はまだ確立されていません。

先行研究では、木炭製造時に得られる木酢タールを減圧蒸留して低沸点成分を除去し、縮合を促進させてピッチ化する方法が検討されました。しかし、木酢タールとガス化発電プロセスから得られる木タールは成分が異なることが予想され、同様にピッチ化できるかは不明でした。

これまでに、先行研究に従って木タールの減圧蒸留を行った結果、アスファルトの硬さを評価する針入度試験や、タフネス・テナシティ試験、マーシャル安定度試験において、アスファルトに近い結果が得られました。これにより、木タールが道路舗装材として使用できる可能性が示唆されました。しかし、木タールで作ったアスファルト供試体を60℃の恒温槽内で16時間浸漬したところ、供試体が崩壊する現象が見られました。この原因として、木タール中の官能基に含まれる親水性基が影響している可能性が考えられました。

そこで、1H-NMR、13C-NMR、FT-IR、GC-MSを用いて温水可溶成分を分析した結果、フェノール性化合物が多く含まれていることがわかりました。本研究では、フェノール由来の水酸基をカルボン酸無水物でアセチル化することで親水性を低下させ、耐水性を向上させる改質を試みます。