癌や特定疾患の早期発見のために,重要な技術案件です.また,簡便なDNAの検出技術は,近未来のテーラーメード医療のために必須技術となるでしょう.我々は,このような超微量生体分子の検出技術(バイオセンサー)のための基礎研究を行なっています.
DNAや生体小分子は基本的に無色であり、また外部からの刺激に無頓着です。ですから、ターゲットとなる生体分子を検出には何か目印をつけるしかありません。良く用いられるのは蛍光分子(光を照射すると発光する分子)です。これでターゲット分子を標識化して、センサーの目印にするのです。つまり、蛍光を良く発する分子であればあるほど、ターゲット分子を見つけやすくなります(検出感度が高くなります)。この技術を蛍光標識型バイオセンサーと言います。最近の研究トピックの一つとしてこの技術に金属ナノ粒子の光閉じ込め効果を活用する研究があります。例えば、最近では金ナノ粒子や銀ナノ粒子を用いて蛍光分子の蛍光強度(蛍光量子収率)を劇的に向上することに成功した例が国内外で報告されています。しかし、我々は金や銀のような高価な金属を用いては、実用技術になり得ないと考え、銅のナノ構造を用いて効率の良い光閉じ込め現象の発現に成功しました。銅の本質的な誘電特性を理解し、物理化学的な工夫を凝らして実現出来ました。そして、この銅の光閉じ込め効果によって、蛍光分子の蛍光を最大で90倍にも増強させることに成功しました。この研究成果は、世界的に権威のある国際雑誌(ACS Nano)に掲載されました.この成果を活用すれば、安価な銅のナノ構造で蛍光標識型バイオセンサーの飛躍的な高感度化が望めると考え、日夜、研究に励んでいます。
※産業技術総合研究所 牛島先生、福田先生、日下先生、長崎大学 田原先生、滋賀県立大学 秋山先生との共同研究です。大変お世話になりました。