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「物質を泳がせて一気に測定する
  ~フローシステムを利用したオンライン分析法~」 助手 吉川 賢治

 3.3 キャピラリー電気泳動について
  CEとは、泳動溶液を満たしたキャピラリー管内に試料を注入し、電圧をかけることにより溶質の移動度の差を利用する分離方法です。
 まず、キャピラリー内壁に存在するシラノール基(-SiOH)が泳動溶液中で解離し、シラノールイオン(SiO)となります。その後、内壁周辺に泳動液中の陽イオンが集まり電気二重層を形成します。さらに、キャピラリー両端に電圧を印加することで電気二重層を形成する陽イオンが陰極方向へ向かって移動します。この陽イオンの移動に伴い、周囲の液体は陰極方向に引き付けられます。この流れを電気浸透流(EOF)といい、各成分の電荷やイオン半径の違いにより各物質を検出します。EOFの模式図は図7に示すとおりです。
図7 EOFの模式図
図7 EOFの模式図
 図7より、電圧をかけると陽・陰イオン、中性物質ごとに移動します。即ち、キャピラリー管内を各成分が泳ぐとイメージすればわかりやすいでしょう。LCと違う点は、LCは種目別(陽・陰イオン、中性物質)の同時分離はほぼ不可能であるのに対し、CEは一斉スタートが可能です。
 CEは試料及び泳動溶液の使用量が少量で済み、高電圧下での測定が可能という特長を有します。また、LCと比較して測定時間の短縮が可能なことから高い分離能を有し、ろ過や希釈等の簡単な前処理のみで測定が可能です。CEの装置構成は図8に示すとおりです。
図2 LC(特にIC)の装置構成ICの写真 CEの写真
 
図8 CEの装置構成
 なお、成分の移動度の依存因子には、キャピラリー温度、電圧、泳動溶液の濃度、pHなどがあり、これらの因子を変えることで、多成分同時分析が可能となります。