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「物質を泳がせて一気に測定する
  ~フローシステムを利用したオンライン分析法~」 助手 吉川 賢治

3.フローシステムを用いた分析法による研究例
 フローシステムを用いた分析法として、フローインジェクション分析(FIA)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)などが挙げられるが、以降は私が主に携わっているLC及びCEを中心に紹介します。

 3.1 液体クロマトグラフィーについて
 クロマトグラフィーとは、固定相(シリカゲル、有機ポリマーなど)と呼ばれる物質の表面あるいは内部を移動相(有機溶媒及び緩衝溶液など)と呼ばれる物質が通過する過程で、物質そのものの大きさ、吸着力、疎水性などの違いを利用して成分ごとに分離する分離手法の一つです。また、固定相及び移動相に何を用いるか組み合わせによって様々な名称があり、移動相に液体を用いるクロマトグラフィー全般を液体クロマトグラフィー(LC)といいます(移動相に気体を用いるクロマトグラフィーは、当然ガスクロマトグラフィー:GCという)。
古典的なLCでは、ガラスカラムに固定相を詰め、その上端に分析対象物を置き、溶液を注ぐ自然落下に基づいた方法でした。しかし、装置構成の進化に伴い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が開発され、特に電気伝導度検出に特化したイオンクロマトグラフィー(IC)が現在では汎用的に用いられています。LCの簡単な装置構成は図2に示すとおりです。
図2 LC(特にIC)の装置構成ICの写真 ICの写真
 
図2 LC(特にIC)の装置構成
 送液ポンプによって一定流速にて移動相が送液されます。インジェクターより試料を注入すると、移動相の流れに乗って分離カラムに到達します。分離カラムにて吸着された各成分は物質そのものの大きさ、吸着力、疎水性などの違いによって溶出された後、検出器の到達順によってクロマトグラムとして記録されます。
 同じことを競泳に例えると、競泳選手が各成分、プールに飛び込む瞬間が試料注入の瞬間、プールそのものが流路、ゴールが検出器(到達タイムが保持時間)となります。当然のことながらゴールに到達する時間は各々異なることでしょう。このときタイムの異なる要因は何でしょうか。各選手のキャリア(代表選手と素人)、泳法(自由形と平泳ぎなど)、その日のコンディションなどが挙げられます。
 どちらにしても共通ですが、各試料(各選手)の性質(コンディション)によって、検出時間(タイム)が異なるのです。