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「セントラルサイエンスとしての分析化学-分析化学を学ぶ意義-」 教授 櫻川 昭雄

 2.3 今後の分析法の開発の視点
 これまで述べてきたように、社会からの要求あるいは研究の進歩の伴い、より高度な種々の分析技術の必要性が求められています。その中で考えられる一例を紹介します。
  (1)新しい原理に基づいた分析機器の導入あるいは今まで利用されていなかった化学反応の利用(高感度化)
  (2)分析技術者(職人技)に頼らない機器による自動分析化(高精度化)
  (3)人件費の削減(分析コストの軽減)
  (4)ゼロエミッション化(排泄物の削減あるいは低減化)(環境問題への配慮)
 最新の高感度分析法として、ハードの面ではプラズマを利用する分析法があります。誘導結合プラズマ・質量分析法や(ICP-MS)や誘導結合プラズマ・発光分析法がよく知られており、高価ではあるが多元素が同時に測定でき、装置の制御やデータの取得・データの処理がコンピュータで行える便利な装置でもあります。一方、ソフトの面からみると、分析が微少量の試料および少ない量の試薬で行えるような試みがなされています。また、分析を試料採取現場(オンサイト)で行う技術開発や分析の質の向上を目指した試みも数多く行われています。 本研究室においても今後の分析化学に対するこのような発想のもとに、具体的な取り組みを行っており、その一例を紹介します。分析の高精度化すなわち測定精度の向上を具現化するため、自動化分析として流れの中での分析に取り組んでいます。この中には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、フローインジェクション分析(FIA)およびキャピラリーゾーン電気泳動(CE)などが含まれます(図2)。
図2 フローシステムの種類 FIAの写真
FIAの写真
HPLCの写真
HPLCの写真
図2 フローシステムの種類
図3 従来法との比較
図3 従来法との比較
 従来から行われてきた方法との比較を図3に示しました。従来はビーカ、ピペット、メスフラスコやビュレットを使用して行っていた分析を、キャピラリー(毛細管)の中で化学反応と検出を行うことにより、化学分析の自動化、省力化およびスキルフリー化(熟練した技術を必要としない)を実現するとともに、化学分析の高度化、感度・精度・正確さの向上、簡便化、迅速化や単純化が図れるものと信じています。