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「物質を測る-全元素分析で何が分かる!?」 准教授 森田 孝節

1.はじめに
 私達は日常の生活の中で無意識のうちに様々なことに対して「分析」していることを知っていますか?例えば道を歩いていて突然,目の前に「なにか?」が飛び出してきたとします。皆さんはどうしますか?まず人は3つのことを同時に行っています。一つは「見ること」もう一つは「聞くこと」そして「嗅ぐこと」,この3つから情報を収集し,同時に過去に経験のある事象を引き出し,結論付けを行っています。先ほどの例では飛び出してきたものが毛むくじゃらで口がとがっていて耳が大きく尻尾があり,「ワン」と鳴けば「犬」という結論を導き出します。人はこの他にも2つ情報を収集する術を持っています。そう「触ること」,「食べること」です。すなわち人はこれら5感を駆使して情報を取り入れ,一つの結論を導き出しています(図1)。この経験にないものが「未知のもの」ということになります。これは生物全般が行っていることです。すなわち「分析」を行うということは様々な方法を用いて情報を収集し,一つの結論を導き出すということです。では化学において情報収集に用いる手段としてはどのようなものがあるでしょうか?
図1 われわれが未知なものに出会った瞬間とる行動は?
図1 われわれが未知なものに出会った瞬間とる行動は?

2.情報を収集するための手段
 化学で情報を収集する対象は「化学物質」ということになります。化学物質について目や耳などの人の5感に相当するものが「実験」ということになります。ただ実験といってもいろいろなアプローチの仕方があります。具体的には図2のようなものがあります。
 化学物質を認識するにはまず「化学的分析法」があります。皆さんご存知の「滴定」や「沈殿生成」がこれにあたります。つまり化学反応を基に化学物質を認識する方法です。
 もう1つは「物理的分析法」,これは化学物質の認識を物理的に行う方法です。これには「炎色反応」があたります。さらに「生物的分析法」,これはバイオアッセイや生物応答といい,興奮物質のフェロモンの分析などが挙げられます。このような方法を使って情報を得るわけですが,どのような情報が得られるのでしょう?
図2 実験で情報を得るためには?
図2 実験で情報を得るためには?