無機材料化学研究室 遠山グループ│日本大学理工学部 物質応用化学科

研究紹介

化粧品用水酸アパタイト粉体の開発

 近年では安全性の高い化粧品基材が求められており,歯や骨などの主成分であり生体親和性のある水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2; HAp)が新規化粧品基材として注目されてきています.

 このため当研究室では二酸化炭素共存下で調製できる高濃度HAp水溶液をマイクロ波加熱することにより,皮脂吸着能に優れる化粧品用HAp粉体の開発を行っています(図4).この粒子は板状結晶が中心から放射状に結晶成長したフラワー状粒子で,細部に皮脂を吸着・固定化できる空隙をもった特徴的な形状をしています.そこで,この粒子の皮脂吸着特性を評価した結果を図5に示しますが,市販化粧品粉体であるタルクやナイロンパウダーよりもHAp粉体の皮脂吸着量は高く,フラワー状とすることで吸着量はさらに向上していることがわかりました.また,フラワー状HAp粉体は板状結晶の空隙に皮脂を取りこむため,皮脂吸着後の光沢度を測定しても光沢度の上昇は認められず,テカリおよび化粧崩れを防ぐ基材として利用できるのではないかと考えています.

図4 フラワー状HApの電子顕微鏡写真

図5 フラワー状HApの皮脂吸着能