有機応用化学特論Q&A 041105
Q:ちなみにこれは確認なのですが、トリアシルグリセリドを常温で置いておくと酸価
(acid value)が高くなるのは空気中の水分と加水分解を起こすってことですよね?
それを踏まえて質問です。トリアシルグリセリドが加水分解する際はもちろん両端
の1,3位のアシル基から切れていくと思うのですが、1,3位での加水分解のし
やすさに違いは無いのでしょうか?(例えばアシル基の鎖長が短い方が加水分解され
やすいとか不飽和結合をもつアシル基の方が加水分解されやすいとか)
A:まず,生体内で酵素の作用によって加水分解する場合は 1,3位が優先的に切断され
ますが,化学的な触媒(アルカリとか酸)や空気中ですこしづつ加水分解される時
は位置で切れやすさに差はありませんし,アシル基の違いによっても差はありませ
ん.
しかし,酵素には脂肪酸特異性があることが知られていて,酵素の種類によって加
水分解されやすいものがあります.しかし,同じアシル基だったら,1位と3位の
違いによる作用が異なる酵素はまだ知られてはいないと思います.
Q:プリント3ページ目の18.7の水素添加についての質問ですが、二重結合に水素が付加
する時にシス型、トランス型による違いの影響にはどのようなものがあるのですか?
A:シスでもトランスでも水素添加に関しては違いはないと思います.
Q:私は紅麹について研究をしていますが、その文献の中でアテローム性硬化症を予防
するという内容を見かけましたが、その原理もレセプターに関係しているのでしょ
うか?
A:生体内の情報のやりとりは基本的にレセプターによっているので,当然関係してい
ると思います.
Q: スフィンゴミエリンは神経組織のミエリンの構成員で脳や脊髄に大量に存在し、神
経繊維を保護する役割があるとありましたが、スフィンゴミエリンの代謝経路はどの
ようになっているのでしょうか?スフィンゴミエリンは血液中にも多いとあったので、
血液を介してスフィンゴミエリンが脳等に運搬されていると考えていいのでしょうか?
A:いえ,たぶん細胞内で合成されるのだと思います.
Q:不要となったコレステロールは油溶性のため、腎臓では処理できず胆汁に混ぜて排出
されるみたいなのですが、せっかく排出されても、腸とかで再吸収されてしまったら
りしないのですか?またコレステロールを胆汁酸に変換するには、ビタミンCが必要
とあったのですがビタミンCはどういう風に働いて胆汁酸へと変換するのでしょうか?
A:たぶん胆汁に混ぜることで再吸収されにくいのでしょう.ビタミンCはたぶん補酵素
として働くのだと思います.
Q:ヒト皮下脂肪の融点は体温よりも低い値を示しています。では、体内ではどういう状
態で存在しているのですか?やはり液状なのでしょうか。
A:脂肪細胞内に液状であるのでしょう.
Q:以前生命の誕生はRNAからだろうと教わりました。RNAたんぱく質ですが脂質は何時頃
地球に誕生したのでしょうか?また、どのようなきかっけで脂質は誕生したのですか?
A:細胞膜はリン脂質ですから,核酸やタンパク質を外界から保護するために細胞ができ
た時だと思います.
Q:天然の不飽和脂肪酸は,ほとんどがZ型なのはなぜですか?
A:その方が分子の曲がり方が大きく,より融点が下がるからだと思います.
Q:健康番組で悪玉コレステロール,善玉コレステロールとありますがコレステロ ールに
も種類がたくさんあるのですか?
A:コレステロール自体には違いはありませんが,血液中の状態が違うということです.
Q:オレイン酸のtrans-配座は存在しないのですか?
あるとしたらどのような慣用名なのですか?
A:エライジン酸といいます.
Q:今回の脂質は当然、疎水性であり、水に不溶性であるのですが、この不溶度、水を弾く
能力を数値化した単位みたいなものはあるのでしょうか?
A:HLB値はどうですか.
Q:授業中にふと目に入って疑問に思ったのですが、単純脂質の化学的性質のけん化につい
て、実験に用いる界面活性剤を石鹸(洗剤など)で置き換えてもほとんど問題は無いの
でしょうか?
A:問題ないと思いますが,固体の石鹸は使いにくいのでは?
Q:スフィンゴ脂質は普段の食事で、どの食品に多く含まれているのでしょうか?
A:わかりません.ただ,食べても消化されてしまい,そのままでは使われないと思います.
Q:動脈硬化など血管の病気にポリフェノールをはじめいろいろなものが効果があると言わ
れていますが実際のところ何が一番効くんですか?
A:「効く」というのをどう定義するかによるでしょうし,効いても副作用も大きくては困
りますよね.
Q:天然の脂肪全体を構成する脂肪酸の50%以上がオレイン酸なのは,構造が安定してい
て融点が低いからですか?
A:そうですね.二重結合が多いと酸化されやすいですし,生物が利用しやすいのだと思い
ます.
Q: リン脂質は細胞膜やペルオキシソーム膜等の細胞構成要素の一つとして使われています
が、これは長鎖両親媒性物質で水の共存下で特異的に分子集合体を形成するという特徴が
あります。そしてリン脂質は二分子膜構造を骨格とする一重や多重の層状構造を形成する
ということなのですが、このリン脂質物性、分子集合体の形状、脂質分子の集合状態など
を調べる方法はあるのですか?もしあるのならどのような方法で調べることができるので
すか?
A:最近は高性能の電子顕微鏡で直接観察できますよね.もちろんX線回折もよく使われます.
Q:動脈硬化は血中のコレステロールの量が多すぎることによっておこるようですが、血中の
コレステロールの量を減らす、または、LDL値を低くしたり、HDL値を高くしたりする方法
にはどのようなものがあるのですか?
A:昔はリノール酸にそのような作用があると言われてましたが,ちょっと前はリノレン酸や
オレイン酸がよいとも言われました.現在では講義で話した n-3対n-6 の脂肪酸の比率が
重要だというのがよく言われています.
でもまあ,一般的な健康法(好き嫌いなく食べて運動する)のがよいんじゃないでしょう
か.
Q:脂質について
CH2OCOR
|
CH2OCOR'
|
CH2OCOR''
脂質のRの部分にはアルキル鎖が入ると思うんですけど、絶対真っ直ぐな形で平行にならぶ
ものなんでしょうか?グネグネ曲がりくねって平行じゃなく並ぶんでしょうか?
A:固体の場合は2位が反対に出て,結晶構造をとるようです.液体ではやはりグネグネでしょ
うね.
Q:プリントで、セッケンの洗浄機構についての図が、ありましたが、この図を見る限りではグ
リースをセッケンによりコロイド状に分解してから水で流しています。
ここで気になったのですが、セッケンで洗浄できる汚れは、油による汚れだけなのでしょう
か。
A:そうだと思います.インクや血は石鹸ではあまりよく落ちませんよね.
ただタンパク質が多い汚れでも脂肪が混ざってることが多いので,けっこう落ちるでしょう.
Q:脂質について。
くだらない質問になっちゃうと思うのですが、脂質ということで、ダイエットについてなん
ですが,最近色々なサプリメントがでてて、食べるだけでやせられるというようなものがで
てますよね。新聞で結構前によんだのですが、海外の大学かなにかでも食べるだけでやせら
れる成分みたいなものが発見されたらしいのです。これ以降、効率よく効果が発揮するよう
な成分というようなものは発見あるいは人工的につくれるのでしょうか?
A:くだらなくないです.そういうことに興味をもって質問するのはよいことだと思います.
ダイエットというのは特にアメリカでは大問題で,一山当てようという研究が結構あります.
で,中にはちゃんと理論的な裏付けがあるものもあるだろうし,今後画期的なものが開発さ
れる可能性もあると思います.
でも,基本は健康的な食事と生活ですよねぇ.
Q:低密度リボタンパク質は悪玉コレステロールとも言われて、動脈硬化の原因になるとのこと
でした。
単純な質問なのですが、静脈硬化というのはあまり聞きませんが、動脈硬化の方がおこりや
すいといったことはあるのでしょうか?それとも静脈にはLDLリセプターが多く存在している
ということなんでしょうか?
A:なかなか面白くてよい質問だと思います.たぶん,静脈に流れている血液には排出されるべ
き老廃物が多く,動脈より LDL が少ないんじゃなないでしょうか.
静脈硬化というのを効いたらぜひ教えてください.
Q:セッケンの洗浄効果が硬水により多く含まれる金属イオンにより妨げられると言う事は聞いて
いましたが、この弱点を解消したセッケンは未だにないのでしょうか。(そうじゃないと硬水
を多用する国ではセッケンが売れないのでは?)
A:中性洗剤がまさにそうですよね.上水の硬度が高いとこではやはり石鹸は売れないんじゃな
いでしょうか.
Q:前回は脂質の講義をしていただきましたが、脂質成分の合成などはするのですか?
A:合成は可能だと思いますが,天然で安く入手可能なものが多いので,あまりされてないと思
います.もちろん付加価値が高いものは試みられるでしょう.
Q:アラキドン酸濃度が増加している細胞があったとして、その増加を誘導している可能性のあ
る因子を教えてください。
A:アラキドン酸はプロスタグランジンの前駆体として有名ですから,生理的にプロスタグラン
ジンが必要とされてるとかでしょうか.
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