光エネルギーを活用するデバイス・システムと聞いて何が頭に浮かびますか?
高機能な光デバイスの構築に関する研究は古くから盛んに行われています。特に21世紀は“光の世紀”とも呼ばれ、これら研究が花咲き、環境に優しく、便利で、安全な社会の完成に貢献していくでしょう。
また最近では、光エネルギーを活用し、未だトップクラスの死因順位を占める癌を、外科手術なしに、副作用もなしに治療する、光線力学療法に代表されるそんな究極の医療技術の開発が進められています。また、光を使ったこれら病の早期発見技術も世界中で活発に研究が進んでいます。しかし、このような真に環境や健康に貢献出来る究極の技術は未だ実用化されておらず、我々はこれらの実現のために、更なる革新的発見を要しています。
このような光エネルギーを利用した技術は、根本的には“光”と“物質”の相互作用(光化学反応)によって成し得られます。よって、上記のような夢の実現にはこれまでにないほどの効率的な光化学反応を実現する必要があります。そのために、これまで化学の世界では、主により良い“物質”を創り出すことに主眼が置かれていました。しかし視点を変えてみると、光化学反応のためのもう一つの因子である“光”には注目されてきませんでした。より良い“物質”の創出に加え、“光”エネルギーを自由自在に操ることができれば、光化学反応を更に強めることができ、より夢の実現に近づけるはずです。
当研究室ではこのような視点の基、化学の力で光エネルギーを自由自在に操り、やはり化学の力でより良い物質を合成し、この技術らを組み合わせることで、これまでにないほどの高効率な光/電気エネルギー変換素子の開発や、医療技術の開発を目指して研究を展開しています。そのためのキーとなる材料として、貴金属(金や銀)でできたナノ材料に着目しています。貴金属ナノ材料は入射した光と相互作用することにより、入射光よりも強い光(電場)を発現します(少し語弊がありますが、流れてくる水をバケツで溜めるように、入射してきた光エネルギーをその場に溜めこむことができるのです。我々はこれを光閉じ込め効果等と呼んでいます)。このような不思議で、かつ素晴らしい機能を持つ貴金属ナノ材料を利用すれば、閉じ込めた光エネルギーを光化学反応に利用することで、夢の実現に近づけると考えているのです。
このようなコンセプトの基、私たちは貴金属ナノ材料を中心に光機能性ナノ材料を合成し、高分子・有機分子・機能性無機材料・炭素ナノ材料と複合化し、これらを利用したエネルギー変換素子(太陽電池)や医療に応用可能なナノ材料の開発を行なっています。
“大いなる目標に向かって、楽しく、ひたむきに研究を進める”研究室を目指し、学生の視点からは、これら研究を展開するうえで、物理化学・電気化学・光化学・分析化学・材料の化学・応用物理学など、広い視野をもった次世代の研究者・技術者として成長してもらいます。
また、学内外の研究機関との共同研究も積極的に推進しています。現段階では、産業技術総合研究所、東京理科大学、九州大学、滋賀県立大学、長崎大学(以上、学外)、日本大学薬学部、松戸歯学部、理工学部(以上、学内)の先生方と共同で研究を推進しています。学生の皆さんも研究という仕事を通してレベルの高い研究機関と関係することで、一流の研究者・技術者に成長して貰いたいと思っています。