生物の特徴は,

多様性!

 生物の特徴は,多様性です.身のまわりを眺めるだけでも,植物や動物や昆虫など,いろんな色をした様々な形の生物がいますね.しかし,地球上にはもっと多様性に富んでいる世界があります.それは目に見えないほどの小さな生き物の世界,微生物の世界です.
 微生物には,真核生物と原核生物がいます.真核生物のからだは,われわれ人間と同じ真核細胞でできているので,その細胞生物学的な研究は人間の理解をも深めてくれます.当研究室では,D-アミノ酸を食べることができる酵母菌や光エネルギーを使ってCO2から有機物を合成してくれる緑藻などの真核生物を研究しています.原核生物には,古細菌や真正細菌がいます.より多様性に富んでいるのはこれらの原核生物の世界なのです.光の届かない深海や凍土の中や火山の火口付近など,人間ならすぐに死んでしまう環境にも微生物は生息しています.当研究室では,100℃が一番好きな古細菌や硫黄が好物の細菌などを育てています.
 微生物がどこでどのように生きているのかを調べるだけでも,困難でかつ楽しい研究なのですが,微生物は人間に必要なものを作ってくれたり,不要なものを分解してくれたり,地球上での元素のリサイクルに励んでくれたりと,様々な応用が可能な研究対象なのです.

100℃という環境に生きている生物

 地熱発電所や温泉の源泉などの100℃を超える過酷な環境で採取された細菌を培養し,酵素を精製することにより,細菌がエネルギー(ATP)をつくるシステムを調べています。また、精製した酵素の耐熱性を調べることにより高温に耐えるタンパク質の謎に迫ります。
(写真右:Pryrobaculum ogunienseの培養)





Pyrobaculum islandicum

硫黄が好物の細菌

  硫黄化合物をエネルギー源とする細菌,硫黄酸化細菌(Starkeya novella)において,硫黄化合物の酸化に関連している酵素を精製し研究しています。また,この細菌は無機物のみで育てることができます.このときの炭素源はCO2なので,地球上のCO2濃度を下げるために利用できないかについても研究しています。





Starkeya novellaの電子顕微鏡写真

緑藻のアラニンラセマーゼ

 光合成をする真核生物である緑藻には,アミノ酸の一種であるアラニンのラセミ化を触媒する酵素であるアラニンラセマーゼをもっているものがいます.1つの細胞で生活をしているクラミドモナスや群体を形成するゴニウム(8個の細胞),パンドリナ(16個の細胞),ユードリナ(32個の細胞)などです.緑藻はこの細胞数の多くなる順に進化したと考えられていますが,細胞数2000の群体を形成するボルボックスは,アラニンラセマーゼをもっていません.そこで,この単細胞から多細胞生物に最も近い群体へ進化する過程において,アラニンラセマーゼ遺伝子がどう変化していったのかを,酵素の性質を手掛かりにして追跡することにしました.また,クラミドモナスのもつアラニンラセマーゼは,いままでに知られているアラニンラセマーゼとは,まったく違うアミノ酸配列をもつことが分かりました.そこで,遺伝子工学的手法を用いて大腸菌にこの酵素タンパク質を大量に作らせて,その立体構造をX線を使って調べようとしています.どんな構造が現れるか楽しみです!

(写真:Chlamydomonas reinhardtii
[ Chlamydomonas movie ]: クラミドモナスが泳ぐ様子を顕微鏡で観察しました!



Volvox carteri

[movie]: Volvox が泳ぐ様子を顕微鏡で観察しました!

 

 [ movie ]:鞭毛を観察するのはなかなか難しいのですが, Gonium をカバーガラスで押さえつけて(かわいそうやけど。。)鞭毛を観察しました!なんとか見えてます!!

緑藻や藍藻がCO2から作る有機物の利用

 緑藻や藍藻は光エネルギーを使ってCO2と水から有機物(糖)を作ることができます.これは,植物が行う光合成と同じ反応です.これをうまく利用して,CO2と水を原料として,太陽光をエネルギーとして,有用な有機高分子材料を合成する,ことにチャレンジしています.具体的には,緑藻・藍藻が作る糖を原料にして、酢酸菌にバイオセルロースを作らせようとしています.また,いろいろな緑藻や藍藻が作る細胞外高分子の中から,機能性高分子を探し出そうとしています.

赤い酵母菌が作る酸性D-アミノ酸分解酵素


 Rhodotorula属の酵母菌の中にD-グルタミン酸を分解して利用できるものがいます.それは,D-グルタミン酸酸化酵素という酵素をもっているからです.この酵母菌の中には,この酵素に加えてD-アスパラギン酸酸化酵素という酵素も持っているものがいます.これら2つの酵素は,区別することが難しいD-グルタミン酸とD-アスパラギン酸の分析などに有効なので,その利用を目指して研究を進めています.(写真:Rhodotorula glutinis






















ファージディスプレイの応用

 微生物に感染するウイルスのことをファージといいます.大腸菌を宿主とするファージの頭に人工的にタンパク質でできた髪の毛を生やす技術をファージディスプレイと呼び,タンパク質とタンパク質の相互作用の研究に利用されています.当研究室では,この技術を使って,新規な金属触媒を作ったり,表面プラズモン効果を有する金属ナノ粒子を作ることを試みています.
   
人工の髪の毛を生やしたファージ!