日本大学N.プロジェクト 研究代表者 物質応用化学科 准教授 大月 穣
日本大学はその名にたがわず日本で一番大きな大学です。箱根駅伝では多くの人がテレビで日本大学の名前を耳にし,ピンクの旗を目にするでしょう。一番日本大学を有名にしているのはたぶん付属高校の甲子園での活躍でしょうか。そうそう,日藝はとても有名で,爆笑問題(ほとんど学校に来てなかったそうですが)や三谷幸喜さん(間違いなく天才です)を輩出しています。
ところが大学の本来の存在意義である研究と研究を通じた教育という面では,残念ながら,大きさ程の存在感を示していません。
それぞれの学部が,たとえ地理的に離れていても,もっと協力すればいい方向に向かうはずだと考えた先生方,事務局の方々が本部に集まり,数年前に「学術研究戦略会議」という会議を立ち上げました。そして,違う学部の先生方,つまり異分野の研究者が一緒になって,本気になって研究すれば,インパクトのある研究成果を日本大学発として,世の中に発信できるだろうという結論になりました。そして,「健やか未来」というスローガンを作って,本部から億単位の研究費をだして,各学部の合同研究チームからなる健やか未来を作るためのプロジェクトを募集しました。どういう成り行きか私も代表として応募することになりまして,それまで会ったこともなかった文理学部や医学部などの先生方と打ち合わせを重ねて,「ナノ物質を基盤とする光・量子技術の極限追求」というテーマでチームを作って応募しました。そして,私達の研究課題は,倍率16倍を突破して選ばれたのです。
2009年度にスタートしたその研究計画は次のようなものです。健やか未来を実現するためには,世の中には大きな問題があります。なにより人間の健康が健やかな社会の基礎になりますが,日本人の3人に1人が癌で亡なくなっているという現状があります。石油を主とする化石資源の枯渇とそれに関連して大気中の二酸化炭素濃度の急激な増加という問題があります。一方で,情報化社会は急速に進展していて,今後ますます大容量の情報を高速かつ安全に処理する必要が増大すると予想されます。これらの一見多岐に渡る問題は,ナノ科学,ナノ技術が解決に大きく貢献できる問題であると私達は捉えました。ナノは原子が集まってできる分子くらいの大きさの単位で,化学の得意とするところです。そこで,ナノ科学,ナノ技術の基礎分野の専門家と,医療分野,エネルギー分野,そして情報分野の専門家が共同して研究を進められる学部連合チームをつくりました。
研究プロジェクトですから,インパクトのある具体的な研究成果をあげて,それを発信することが最も重要です。早いもので,今原稿を書いている時点でもう1年目が終わろうとしていますが,情報分野で超高速記録に関連した研究がアメリカ物理学会のPhysicsに紹介され,医療分野の遺伝子ネットワークの解析がNatureに掲載されるなど,既に大きな成果も出ていますし,来年,再来年につながる有望な結果も多く出つつあります。
プロジェクトは,日刊工業新聞や東洋経済に掲載され,また,シンポジウムを開催したり,一大科学イベントであるお台場のサイエンスアゴラへ出展したりなど,PRにも努めています.ホームページも訪ねてみて下さい。日本大学のトップページ(http://www.nihon-u.ac.jp/)からリンクされています。
このような成果の発信と同時に,プロジェクト研究として,それらの成果を統合する新しい融合分野を切り開きたいと考えています。プロジェクトが終了予定の4年後,私達のプロジェクトが日本大学発のテーマの産官学連携,国際連携の拠点に発展することができるよう,研究の進め方などについて議論を重ねているところです。
次世代を担う人材を育成することは大学における研究の最も重要な意義の一つです。このプロジェクトでは,最先端研究を通じて,次世代を担う研究開発者を育成します。総合大学の分野横断型研究プロジェクトであるという強みを生かすことによって,分野をまたがる洞察ができて,新しい境界領域を切り開ける人材を輩出できるものと考えています。
工化時報をお読みの物質応用化学科出身のみなさま,私達のプロジェクトは産学共同も重視していますので,一緒にできることがありそうなら声をかけて下さい。フレッシュな物質応用化学科1年生のみなさま,近い将来,化学から周辺領域へ大きな世界が広がりそうですよ。
日本大学N.プロジェクト始動