平成20年は,物質応用化学科創設70周年を迎えました。そして創設70周年祝賀会が6月7日(土)に500名以上の卒業生の方々をお迎えして開催することができました。趣旨にご賛同いただき,祝賀会にご出席いただいた方々,そして募金をしてくださいました方々,さらに多大なるご寄附を寄せてくださいました方々に厚く御礼申し上げます。そして,なにより総務委員の一員として,本事業にかかわれましたことは私にとって大いなる喜びであります。また平成20年は物質応用化学科70周年ばかりでなく電気工学科80周年,物理学科,数学科の50周年,航空宇宙工学科,電子情報工学科,海洋建築工学科の30周年と7学科にわたる周年事業が展開された記念の年でもありました。
年の瀬、清水寺管主による平成20年を表す漢字が「変」と揮ごうされましたことは皆様もご記憶に新しいことと存じます。この「変」の意味するところは,アメリカの大手証券リーマン・ブラザーズの破綻による全世界の景気大不況,アメリカ大統領の交代劇そして大気汚染,森林破壊による異常気象や地球温暖化などの環境変化の顕在化等々を示している象徴的な漢字とうけとめられます。そして平成20年は日本大学,日本大学理工学部にとりまして大きな変化を迎えた年でした。日本大学では6月に総長選挙が実施され,平成17年の総長選挙で理工学部から選出された小嶋勝衛総長に代わり,生物資源科学部から酒井健夫教授が日本大学第12代総長となり,9月より新体制となりました。
理工学部におきましては7月に学部長選挙が実施され,越智光昭学部長に代わりまして,10月より,私が第13代理工学部長となりました。力不足は否めませんが理工学部教職員の方々の力強いご協力をいただきながら現在,新体制を整え,21世紀にふさわしい新生理工学部を構築すべく改革を進めております。
振り返って見ますと,理工学部は創設以来90年になろうとする歴史ある学部です。創設当初より社会における「モノづくり」を実践できる技術者の育成を目標に掲げ教育を進めて,時代の要請とともに大きく成長し,現在12学科,そして大学院17専攻を擁する学部に育ちました。平成20年10月号の雑誌プレジデントに,上場企業の経営陣44,389名の調査による「社長・役員になりやすいトップ160」として,日本大学理工学部は12位(参考:慶応義塾大学理工学部13位)にランクされています。そして実際はこのデータ以上の多くの先輩方が科学技術立国を標榜する日本の工業界や産業界の中核となり,社会の発展に大きく貢献しています。このように卒業生の方々の社会での活躍は目覚ましいものがあります。
しかし,ほぼ「大学全入時代」を迎えた現在,諸先輩方と同様に実社会での活躍を継続するためには,学生の学士力の向上と社会のニーズをしっかりととらえた学部改革が必要と考えます。そこで理工学部では,偏差値60の実力を持った卒業生の輩出を方針として打ち立てました。すなわち,1)入学時に学科の教育方針と特徴・社会への貢献度・学科の将来展望を十分に理解させ,卒業時に至るまでモチベーションを維持でき,社会に貢献できる付加価値の高い学生を育成する教育プログラムの確立,2)現在の多様化した社会の要請に対応し受験生に選ばれる学部組織の再編成,3)学生が気力を横溢させ,学生生活を謳歌できるキャンパスの環境整備,4)多数の卒業生との相互協力による産学官民連携体制を強化した理工学分野における技術革新の推進を重要課題として積極的に改革に取り組んでまいります。そして日本大学理工学部に学び,卒業したことを喜び,誇りと自信,勇気を持って社会で活躍できる学生を一人でも多く社会に輩出することを目指します。
日本大学理工学部長
滝戸 俊夫
(昭和50年博士課程修了)