一日が犬の散歩からはじまる。どんな陽気であろうとお構いなく散歩をせがまれる。同じ道を通り,同じ角を曲がり,ほぼ同じ電柱で用を足す。彼の頭脳は変化を求めず,マンネリ化した散歩をむしろ楽しんでいるようにも見える。少し甚振ってやろうと違う道に回り込んだりすると,後さき動かず,ただこちらを見るばかりで情けない。しかし,これが大学となると,世の流れに甚振られたからと言って動けないとは言っていられない。今,大学は「少子化」による18歳人口の減少と詰め込み教育や偏差値をなくし,考える力を養うことを意図した「ゆとり教育」の失敗といった2つの波にもまれている。これらの波からは「学力低下」の渦が生まれ,大学経営・大学教育に大打撃を与えている。多くの大学がより良い入学生を確保しようと組織改革に凌ぎを削っているが,受験生から理解される魅力ある組織改革が実現できない大学は徐々に渦に飲み込まれて消えてゆく。
 大学の問題はそのまま学科に当てはまる。学科には学生の学力向上と卒業時の人間保証の責務がある。高校生が化学に何を求め,化学を選ぶことと将来の自分をどのように位置付けているのかをしっかりと調査・分析し,魅力ある学科を構築することが入学生のモチベーションを維持させるものと考える。 大学の一方の柱である研究も,「学力低下」の渦に大きく影響される。しかし社会貢献を使命としている研究がないがしろになってはならない。このため学科は研究分野を拡大し,社会貢献度を増強させるため教員個々を研究ユニットとして位置づけた。この改革を期に,卒業生との産学連携のきずなもより強固にして,より多くの新しい研究の活性化に拍車をかけ使命を全うしなければならない。
今が確実に変革していかなければならないその時と理解している。

教室主任あいさつ

物質応用化学科
教室主任 滝戸 俊夫
(昭和50博士課程修了