微量生体分子の検出技術の開発は,生物化学における基礎的な研究におけるダイナミクス,そして,近未来のテーラーメード医療や,癌の超早期発見技術の実現に直結します.
例えば,通常,このような生体分子検出技術には,蛍光分子を検体分子に結合・標識化することで,検出を行なっています.
しかし,これではサンプルのロスや煩雑な操作が必要,検出感度が低い等の課題があります.
我々は,蛍光分子を標識化する必要のない,簡便かつ,それでいて高感度なバイオセンサーの開発を目指しています.これにも金属ナノ粒子の不思議な光学現象が活用できるのです.
2015年の研究成果を受けて,更に高感度なバイオセンシング材料として,パラジウム(Pd)ナノプレートの活用を着想しました.
この粒子は一般的に合成される球形のPdナノ粒子とは異なり,CDディスクのようなプレート形状を有する異方性ナノ粒子です.これをうまく合成し(下の電子顕微鏡像を参考),バイオセンシング材料としての可能性を調査しました.
結果,予想された理論値よりは低い感度ではありましたが,既に報告されてきた,バイオセンシング材料として有望視されている金ナノロッドなどとほぼ同等の性能を有していることを発見しました.
また,更に高い感度を得るにはどうするべきか?という道しるべも理論的に考察できました.
以上の成果は,Optical Materials Express誌に掲載されることが決定しました.
現在はその考察の実現に向けて研究を進めています.
生体分子がナノ粒子の周辺に捕捉されると,必ず,本当に微弱ながら粒子周辺の屈折率が変化します.これによって,金属ナノ粒子の光特性が変化します.つまり,生体分子を,金属ナノ粒子が出す光シグナルで検出することが可能となるのです.この概念を基にしたバイオセンシングの研究開発競争が世界的に起きています.そのような中,我々は最近,パラジウムナノ粒子が非常に高感度なバイオセンシング材料となることを発見しました.
この研究成果は,世界的に権威のある国際雑誌(ACS Nano)に掲載されました.
このように,金属ナノ粒子を用いて,超高感度バイオセンシング技術を開発し,近い将来はDNAはじめとする様々な生体分子の検出技術まで技術を昇華させるつもりでいます.