有機応用化学特論Q&A 021122
Q:つい2、30年前にはミトコンドリアなどの、今となっては初歩的なものが発見
されたと聞きます。ここ2、3年ではDNA解析が流行になっていると思われま
す。そしておそらく次にはタンパク質の三次元的な構造などが注目されると言
われています。逆に過去から地道に行われている生物の研究はどのようなもの
がありますか。
A:研究者の数としてはむしろ地道な研究の方が多いかもしれませんね。生物種の
分類とか微量な生体成分の分析とかでしょうか。
Q:授業で進化についてとりあげていましたが、先生は地球外生物は存在すると思
いますか?いるとしたらどこらへんに居ると思いますか?
A:地球外にもいると考える方が自然だと思います。条件さえ整えばどこにでもい
るでしょう。
Q:タンパク質の1次構造、2次構造、3次構造の違いが大まかには分かるんですが、
詳しくは分かりません。
A:1次構造はアミノ酸の並び方ですから簡単ですよね。問題は2次と3次ですが、
試験対策的に覚えるより、実際のタンパク質の研究例をいろいろ見てみる方が
理解しやすいと思います。
Q:RNAから合成されたタンパク質は、ゴルジ体によって輸送されると思うのですが、
その後、膜結合性のタンパク質は、どのようにして細胞膜に埋め込まれるので
すか?
親水性の部分と疎水性の部分がどのようにつながるのか、想像しにくいので教
えていただきたいです。
A:おそらく正確なことはまだ解明されていないんじゃないかと思います。ただ、
細胞質は単なる生体物質の水溶液ではなくて、細い繊維が張り巡らされたよう
な複雑な構造があるようで、そういったものに沿って輸送され、決められた角
度で細胞膜に埋め込まれる力が働くのでしょう。
Q:遺伝子を形成する塩基で、DNAがA,T,G,CであるのにRNAがA,U,G,Cですが、4つ
のうち一つだけ違うことでどうなるのか。また、入れ替わるのがなぜAとTであ
るのかを教えてください。
A:入れ替わるのが A と T なのは構造が似ているからです。違うことでどうなる
かはきっとたくさんの仮説や研究例があるでしょう。ただ、もし同じだった場
合はそのような遺伝子を持つ生物は DNA と RNA の差が少ないわけで、遺伝情
報の伝達や発現が不利になるような気がします。
ただし、DNA と RNA の物性(安定性など)の違いは主にリボースの水素と水酸
基の違いによると思います。
Q:人間の脂肪1gあたりの消費カロリーってどれ位なんですか?
A:脂肪1gが発生するエネルギーという意味ならば 37キロジュール(9キロカロ
リー)です。どれくらいエネルギーを消費すると脂肪が1g減るかというのも
基本的には同じですが、脂肪を消費するには有酸素運動がどうのこうのという
話はダイエットの本によく載ってますね。
Q:生物学再入門の授業でやった問題は生物学っぽい問題で生化学っぽい問題にし
なかったと先生は言っておられましたが生物学と生化学とはどう違うんですか?
A:生物学は生物の仕組みや働きを調べる学問で、生化学は生物の体の中で起こっ
ている物質や化学反応を調べる学問、だと思います。もちろん対象が同じです
から共通する部分は多いですが、アプローチ法が違います。
Q:ホルモンについての問題がありましたが、ホルモンは人間には何種類くらい存
在しているのですか?
また、ホルモンが体内で作用するにはどのようなプロセスを経るのでしょうか?
A:あてずっぽうですが、たぶん数百くらいじゃないでしょうか。ただし、ちゃん
と構造と働きが分かっていないものもたくさんあると思います。
一般的な作用プロセスは、まずある臓器で作られたホルモンが細胞表面のレセ
プターに作用し、レセプターが細胞内の特定の酵素の活性化のトリガーをひき
一連の反応が開始する、といった感じです。
Q:ガスクロで検量線を作っているのですが,スプリットをLESSにして測定を行う
と上手くいきません.溶媒のヘキサンで希釈して測定を行っているのですがこ
のやり方ではダメですか?やはりガスクロの試料溶液にも濃度は関係してくる
のですか?
A:上手くいかないという内容を聞かないと分かりませんが、スプリットというの
は要するにカラムへ行く試料を減らすということですから、注入量を減らせば
スプリットレスでも問題ないはずです。溶媒がたくさん通るのはカラムにはあ
まりよくないですが、分析上は問題ないはずです。
Q:現在、食事によって摂取しなければならないアミノ酸を、合成できるような経
路が、体内に形成される可能性はあるのでしょうか。
A:長い時間の進化の結果ならばもちろんあるでしょう。
個体の生存中にという意味ならば、新たに形成される可能性はないと思います。
ただ、不要で働いていなかった代謝系がなにかのきっかけ(薬とか)によって
働くようになるということはあるかもしれません。
Q:テストのないように関しての質問なのですが、1.の3問目、(光合成)の能力
を持たない・・・(ミトコンドリア)から供給されている。とありますが、光合
成の能力を持つ生物は光合成以外にATP合成の機構などはあるのでしょうか。ヒ
トなどの場合、ミトコンドリアからのエネルギーがほとんどですが、無酸素状
態では解糖系などからもエネルギーを得ていることは知っているのですが・・・。
A:植物細胞にもミトコンドリアはあって、ATP を供給しています。そうでないと、
光合成によって作られた糖質からエネルギーを得ることができません。
Q:医薬品合成の分野で薬品を合成する際、同様の構造を持っていても生体に活性
を持つものはその立体構造に依存し、いくつかの立体異性体を持つもので活性
のあるものは1つしか無いという例は多くあり、その唯一の立体構造を持つもの
を微生物や酵素により立体を制御して得る方法が多用されているようだが、こ
のような作用をするものは経験的にしか決定できないのですか。もしくはある
一定の規則性がありその応用という形で多様な物質の立体を制御しているので
すか。
A:作用を受けるレセプターの構造がはっきりしていれば、活性がある立体構造も
はっきりわかるでしょう。また、経験的に活性が高い構造というものもあると
思います。
正確な話はドラッグデザインの本をあたってみてください。
Q:例えば自分が色盲だった場合、子供が色盲にならず孫が色盲になるといった隔
世遺伝がありますが、遺伝子レベルでは、どのような仕組み・影響でそのよう
な事が起こるのでしょうか?
A:色盲は劣勢遺伝でX染色体上にその遺伝子があります。XXである女性は両方
のX染色体に色盲の遺伝子がないと発現しません。男はXYですから、1つだ
けのXに色盲の遺伝子があれば発現するので、色盲は男に多い遺伝病です。
色盲が発現するかどうかは母親のX染色体2つと父親のX染色体1つの内どの
X染色体を受け継ぐかによって決まるので、親が色盲の遺伝子を持っていても
発現しない可能性があります。
Q:地球上に存在する酸素は強力な酸化剤であり、最初、地球上の生物は水中で生
まれたため無事でしたが、その原始的な生物は陸に打ち上げられたりするとす
ぐに死んでいったそうです。今現在の生物は酸素を呼吸でとりこみ、エネルギー
源としております。こういった進化(克服)は生物の基本だとよく言われます。
では、原始の酸素が苦手だと言われる生物は化学的にどこが酸素に対して弱かっ
たのでしょうか?また、それを生物はどうして克服しえたのでしょうか?
A:今の生物にも酸素は有毒です。ただ、エネルギー獲得のために酸素を利用する
ような進化をした結果、防御する仕組みも発達しました。そのような仕組みが
なかった原始生物は酸素中では生存できません。
活性酸素をキャプチャーするポリフェノールが体によいとか言われるのは、酸
素が細胞中では有害だからです。
Q:遺伝子の解析が進む昨今、種によって塩基の数が異なっていますが、ものによっ
てはヒトゲノムの塩基の数より多いものがあり、生物の複雑さには塩基の数は
大きな要因にはなっていないようですが、これはどういう理由でしょう。
A:進化の経路によるのでしょう。使わない塩基は高等生物にはたくさんあります
から、その量はどのような経路で進化してきたかによって違うのは当然でしょ
う。
ただ、ヒトが一番複雑で高等ではないと思います。たまたま大脳が異常に発達
しただけです。
Q:糸状菌が一番酵素の働きが活発な時は何期ですか?
A:糸状菌に限らず、微生物が活発なのは対数増殖期ですから、酵素も同様でしょ
う。
Q:クローン羊ドリーが成長が早くすぐ老化すると聞いたのですが,同じ遺伝子を
持っていてるだけでは,完璧ではないのですか?
A:よく知られている説では、体細胞の DNA は細胞分裂のために複製されるたびに
末端にあるテロメアという塩基配列が少しづつ減っていき、分裂回数をカウン
トし、ある回数に達すると複製できなくなります。
体細胞クローンであるドリーはすでにテロメアが短くなっている体細胞から作
られたクローンですから、本来の生殖細胞から生まれた羊より早く老化するら
しいです。
減数分裂にはテロメアの長さを元に戻してリセットする仕組みがあるようです。
Q:癌になるひとは遺伝子に欠陥があるという話を聞いたことがありますが、遺伝
子治療で治すことはできるのですか?また、その場合どのような方法なのでしょ
うか
A:遺伝子治療というのは特定の部位の欠陥がある体細胞を正常な遺伝子で補うこ
とで治療することをいいます。そのような方法で治療できる病気はそれほど多
くないと思います。
癌に関して言えば、遺伝子欠陥によらないことも多いのではないかと思います
し、遺伝子治療が有効なことは稀でしょう。
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