有機応用化学特論Q&A 021018


Q:問題の中で,エチレン,プロピレンの合成の仕方で,石油の熱分解が正解でし   たが,高校では工業的な合成法は,クラッキングと習ったのですが正解ですか? A:クラッキングというのは分解ですから、正解です。熱をかけない分解もありま   すが(接触分解)、この場合は熱分解です。理化学辞典があったらクラッキン   グをひいてみましょう。
Q:化学物質の命名方において、置換基の並ぶ順序は、アルファベット順と理解し   ているのですが、同じ置換基が二つあった場合の数を表すアルファベットはど   う扱えばいいのですか?   例えば、methylとethylならethylを先に書きますが、dimethylとethylの場合   どちらが先に来るのでしょうか? A:di や tri などの接頭語はないものとして並べます。dimethyl と ethyl は    ethyl が前です。   教科書にちゃんと載ってます(少なくとも5版には)。
Q:分子内の結合角は、一般的にはどのようにして求められるのですか?   メタンのH-C-H結合角は109.5°とかです。 A:メタンの場合は正四面体ですから、計算で求められますね。複雑な分子でも   電子状態などのデータから理論的に求める方法があって、普通はコンピュー   タで計算するようです。講義でちょっと見せた下巻の付録のプログラムでも   ひずみが最小になる構造を計算できます。   実験的には(たぶん)X線回折などが使われるでしょう。
Q:なぜ無置換シクロアルカンの融点は分子量の増加と共に規則的に増加(また   は減少)しないのですか?沸点は規則的に増大しているんですが、融点だけ不   規則です。 A:教科書(5版)に書いてある答えは「シクロアルカンにより形が異なり、結   晶中に収まる効率が分子によって違うことに由来するものと思われる。」と   あります。   要するに固体は分子が動かないので、きれいに収まる(結晶性が高い)場合   は結晶が壊れにくいために融点が高く、収まりが悪い場合は分子同士の接触   面積が少ないので、分子間力も弱く、融点も低くなります。   一方液体は分子位置が固定していなくて結晶でないので、単純に分子の大き   さが効いてきて規則的なのでしょう。
Q:質問事項は、今回の講義のプリントの問いにもあった不斉炭素(キラル中心)   についてです。sp3混成軌道をとった炭素には他の分子と4つの共有結合を結   ぶことができまが、不斉炭素とは4つとも違う分子、原子がついたものです。   昨年はL型とD型を特別な触媒(バイナップ)により作り分ける不斉合成法を   確立した事によりノーベル賞を受賞しまた。これは、アミノ酸の中心炭素の持   つこの構造のため、L型とD型が存在してしまい、合成時に双方が合成されて   しまうことを解決したとのことです。   質問内容ですが、この’作り分け’を行うのはL型とD型でそれぞれの性質が   同じでない分子の存在のためですが、なぜ性質が違ってくるのでしょうか(調   味料で言えば味、毒性など)?また、その作り分けが難しいのはなぜですか?   そして、作り分けができるようになった決め手はなんだったか?   化学的にはイマイチわかりづらく、疑問です。 A:キラルなものを区別するにはキラルなものが必要です。ですからL型とD型で   性質が違うのはそれと接触した生体内のセンサーがキラルだからです。作り分   けや決め手の正確な話は長田先生に聞きましょう(^^;)。   キラルな分子を分離するキラル固定相のカラムなんてのもあります。 
Q:例えば、HやCなどの元素において、Hの周りには電子が1個回っていて、Cの周り   には電子が12個回っている事は高校で習ったが、なぜ、電子が回っていると言   う事がわかるのか?   また、陽子の質量や電子の質量や中性子の質量はどの様にわかるのか?電子天   秤などの精密な天秤で量ったのか?(笑)実際には天秤では量れないので計算   して求めているのであろうが、その計算式の原理(どういう観点から質量を導   いているのか・・・)や信頼性(実際には量れないと思うので・・・)はどう   なっているのか? A:(正確なことは物理の先生にでも聞いてもらうとして)   電子は回っているというより原子核の周りに「ある」のです。そのあり方がマ   クロな感覚の中では回っているというのに近いだけです。なぜ周りにあるかと   いうのは、回折現象から発見されたのだと思います。   質量は粒子の軌跡やエネルギーを測定して計算で求めるだと思います。信頼性   はかなり高いはずです。
Q:同じ炭素数のアルカンは分岐が増えると沸点が低くなるのは分かったのですが、   二重結合が入ってくるとどうなるのですか?   私は一重結合よりも頑丈な二重結合が入っていることによって沸点が上がると   考えたんですが、実際にガスクロを使って実験してみると、逆に低くなります。   具体的に説明すると、DPAやDHA(共に炭素数22)を測定した時、一般的(単結   合のみで炭素数22)にはピークが20分くらいのところに現れるのに、実験では   DPAが18分、DHAが19分くらいのところにおきなピーク出てしまいました。   なぜでしょう? A:二重結合は一重結合より強いですが、それは分子内の問題で、沸点などの物理   的性質は分子間力によります。二重結合があるとそこで折れ曲がりますから、   分枝があるのと同じような効果で沸点は下がります。特に脂肪酸の場合は二重   結合が cis ですから、余計に折れ曲がりが大きくなります。   また、ガスクロでの保持時間は(カラムにもよりますが)単に沸点で決まるの   ではなくて、固定相との相互作用があるので、複雑です。脂肪酸もふつうの条   件では二重結合が増えると保持時間は遅くなります。
Q:いす形のシクロヘキサン分子内のいづれかの水素が他の置換基になったとき、   残りの水素はアキシアル、エクアトリアルどちらになるのでしょうか?もしく   はどちらにもならないのでしょうか? A:いす形のシクロヘキサンの水素は常温ではアキシアルまたはエクアトリアル   固定されておらず、常に相互変換しています。したがって、1置換シクロヘ   キサンには異性体(アキシアルまたはエクアトリアル)の区別はなく、当然   残りの水素も常に変化しているので、どちらでもないです。   たぶん教科書に説明があると思います。探してみましょう。
Q:普段、研究室でよく使用しているアセトン、メタノール、ノルヘキ・・・など   は工業的にどのようにして合成しているのか?   また、生成などはどのようにして行っているのか? A:おそらく原料はほとんど石油でしょう。エチレンから有機化学でやったよう   な反応で合成されるものもあるでしょうし、石油にもともと含まれていれば   蒸留過程で得られるものもあります。   「生成」は精製の誤変換かな。精製ならばほとんど蒸留だと思います。
Q:第4版のテキスト『マクマリー有機化学(上)』P245で、「7・10 アルケン   へのラジカル付加」の所なのですが、その下の化学式が質問です。3−ブロモ   プロペンから1,3−ジブロモプロパンと1,2−ジブロモプロパンの混合物   ができます。この化学式ではMarkovnikov則が成り立ちません。なぜでしょう? A:たぶんその後に丁寧な説明があると思いますが、過酸化物があると反応中間体   がカルボカチオンではなくラジカルになり、ラジカルの安定性によって結果的   にMarkovnikov則とは逆になります。
Q:有機化学再入門のプリントの8番で同じ炭素数のアルカンでも分岐が増えると沸   点が低くなるのはなぜかという問題で、分岐が増えると密度が小さくなるから   という考え方でもいいですか? A:調べてませんが、分岐が増えても密度はほとんど同じじゃないでしょうか。
Q:先週の授業でやった問題の8.に関して、僕の考えたことと質問をさせていただ   きます。   まず、同じ炭素数のアルカンでも分岐が増えると沸点が低くなるのはなぜか.と   いう問題に関して、先生は一本鎖の場合その分子同士が絡まりあうために沸点   が高くなるのではないか、というようなことをおっしゃってました。もちろん   そのようなこともあると思うのですが、僕が考えたのは、分岐が増えると立体   的に見るとより密な状態になるために、ある分子がほかの分子に及ぼす影響は   小さくなるとのではないかと考えました。つまり分岐が増えれば増えるほど分   子間力などが小さくなリ、結果的に沸点が下がるのではないだろうか。   つぎに質問なのですが、今回の問題は沸点に関する問題でしたが、融点の場合   にも同様のことが言えるのでしょうか。融点の場合は、すべての結合を切ると   いうことなので単純に結合エネルギーの総和の比になるような気がしました。   この考えが正しければ融点は分岐の数に関係なく同じ炭素数であれば同一で   あると思うのですが...。 A:沸点に関する考え方はその通りです。僕の説明の仕方が悪かったですが、教科   書的な回答としては「分子の表面積が小さくなるから」です。   「融点の場合は、すべての結合を切る」では分子が壊れてしまいますね(笑)。   融点に関しては結晶性も重要ですが、分枝があると空間内の収まりが悪く結晶   性も悪くなるので、やはり融点も下がると思います。
Q:合成した物質がキラル炭素を含む場合、二つの物資を分けるにはどのような   方法がありますか? A:同様な質問がありましたが、キラルなものを区別するにはキラルなものが必要   です。キラルカラム以外にも、どちらかにしか結合しないようなものをつけて   分離するなんて方法もあると思います。
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