研究内容



研究内容

 無機材料化学は,周期表にかかれている117元素すべてを対象としており,この各元素を利用して私たちの生活に役立つ材料を作りだすための方法について研究する学問です.
 私たちの研究室では,これら元素の中でも,21世紀のエネルギーの鍵となる水素と,生物・地球環境に重要な役割を果たしているカルシウムにターゲットを絞り研究を行っています.
水素吸蔵材料の創製  (ギャラリー)
 化石エネルギーの燃焼による温暖化防止のための方法として,現在,燃料電池による発電が注目されております.燃料電池とは水素を空気中の酸素と反応させることで電気エネルギーを取り出すことができ,二酸化炭素を排出しない21世紀の新エネルギーです.しかし,実用化のためには水素を貯めておく“水素吸蔵材料”の開発が必要不可欠です.このため,高効率で水素を吸蔵できる材料の開発を目指して,日々研究を行っています.

水素貯蔵材料の開発

カルシウム系機能材料の創製  (ギャラリー)

 無機材料化学の研究対象物質は鉱物資源を原料として,これらの化学的処理によって生産されるセラミックス,セメント,酸,アルカリ,化学肥料など,きわめて広範囲におよびますが,当研究室ではそのなかでも,わが国でただひとつ,最大の鉱物資源である石灰石を原料とする無機工業材料(セメント,セッコウ,石灰,アパタイトなど)に注目しております.当研究室では,代表的な酸化カルシウム系化合物である炭酸塩,ケイ酸塩,リン酸塩,硫酸塩などの合成,構造,性質,用途開発に的をしぼって研究を行っております.とくに,酸化カルシウム系生体模倣材料,蛍光体材料およびコンクリートやセッコウボード廃材のような産業廃棄物の再資源化,二酸化炭素の固定化などを重要研究課題としています.以下,これら研究を簡単に紹介しましょう.

カルシウム系機能材料の創製

1) 物質を材料に変身させる基礎研究の確立をめざして

われわれが物質に手を加えて役立つ形や大きさをもつ物質になったときはじめて材料となります.すなわち,物質の組成,構造,形状,粒径,表面および複合化などのキャラクターを制御することによる新しい物性を発現させた機能性材料を開発するための基礎研究を行っています.
2) 産業廃棄物の資源化による循環型社会をめざして
環境保全,省資源,省エネルギー化の問題解決のためには,一度使用した資源をくり返し使用するリサイクル型社会を形成することが急務となっています.当研究室では廃棄されているコンクリート廃材から,セメントや軽量断熱防火建材用原料としてのリサイクル,また,海水と二酸化炭素の利用によるコンクリート廃材の完全資源化プロセス,また海水中の微生物(円石藻)を利用したコンクリート廃材の石灰化と二酸化炭素の固定などについて研究を行っております.さらに,貝殻や牛骨などの生体鉱物のリサイクルについても積極的に研究を行っています.
3) 生物の無機鉱物化に学ぶ生体模倣材料の創製をめざして
天然生体鉱物の独特の機能,形成機構に学び,これを模倣することによって新しい無機−有機複合材料の開発を行っています.生物が体内や体表にもっている無機鉱物を生体鉱物といい,この鉱物は脊椎動物の骨や歯,サンゴの骨格や貝殻などであり,無機−有機系が複合化した特徴的な構造を示します.当研究室では貝がらを模倣した層状構造をもった炭酸カルシウム(CaCO3)などの生体模倣材料の開発をめざして,電気泳動法を利用した炭酸カルシウム−アスパラギン酸−キトサン系複合材料などについて現在研究をすすめています.
4) 夜間にさまざまな色に輝いて変身する無機蛍光体の創製をめざして
現在,われわれの生活リズムも夜型に移行し,大都市は不夜城化しています。紫外線(ブラックライト)照射することにより発光する無機蛍光体は夜間や暗所で使用され,多様な用途に花開こうとしています.すなわち,太陽光,蛍光灯の光を吸収して発光,あるいは日中は普通の無機蛍光体を含む歩道やオブジェ,案内板,建物の外壁,服飾などが日暮れとともにブラックライトで照らすことによってさまざま色に輝いて変身します.このような都市景観材に応えられるような安価で生産性の高い炭酸カルシウム,リン酸カルシウムを母体結晶とする無機蛍光体の実用化に向け力を注いでいます.とくに,ブラックライトを照射することにより赤,緑,青色に発光する3色の無機蛍光体の合成と残光特性に的をしぼって研究をすすめています.


トップへ戻る