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「物質を泳がせて一気に測定する
  ~フローシステムを利用したオンライン分析法~」 助手 吉川 賢治

 3.2 LCに関連した代表的な研究例の紹介
 3.2.1 カーボン充てんカラムを用いた各成分の分析
 LC用分離カラムは、用途に応じて様々な材質及び分離モードの製品が市販されています。今日では、シリカ(ODSも含む)および有機ポリマーを充てん剤に用いたカラムが汎用的です。しかしながら、前者では耐用pH範囲に、後者では充てん剤自体の耐久性に難があります。 一方、カーボン充てん剤は機械的強度、化学的安定性に優れるという特長があり、LC用充てん剤としても注目され、食品中の成分を分析対象として検討されています。 近年、イオン相互作用試薬を組み合わせたIC1~3) の報告例も見られ、あらかじめ移動相にイオン対試薬を添加したダイナミックコーティング法(図3)、充てん剤表面にイオン交換体として第四級アンモニウム塩をコーティングするパーマネントコーティング法(図4)があります。
図3 ダイナミックコーティング法 図4 パーマネントコーティング法
図3 ダイナミックコーティング法 図4 パーマネントコーティング法
 前者はカーボン自体を固定相とし、イオン相互作用試薬と結合したイオン対を成分とした逆相イオンペアークロマトグラフィーであるのに対し、後者はカーボン表面にイオン交換体の役割を果たすイオン相互作用試薬をコーティングさせたイオン交換クロマトグラフィーといえます。したがって、分析対象や用途に応じ使い分けのきくマルチな分離カラムといえます。 ここでは、固定相にパーマネントコーティングカーボンカラムを、移動相に安息香酸、トリスアミノメタン混合溶液を用い、電気伝導度検出器を組み合わせたICにより、有機酸(酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸)及び無機陰イオン(塩化物、亜硝酸、硝酸及び硫酸イオン)の溶離挙動、食品中の有機酸分析への適用例4)~5)を紹介します。
図5 有機酸及び無機陰イオンのイオンクロマトグラム
図5 有機酸及び無機陰イオンのイオンクロマトグラム
 
 図5より、水試料中に一般的に含まれる無機陰イオン(Cl-, NO3-, SO42-)、食品添加物として含まれる可能性のある亜硝酸イオン(NO2-)及び主要な有機酸(上記の6種)の分離が可能であることから、本法を食品中の有機酸の分析法として適用しました。結果は表1に示すとおりです。
表1 ICによる食品中の有機酸の定量結果
表1 ICによる食品中の有機酸の定量結果